【暫定税率廃止後も高い理由】ガソリン税28.7円と消費税の内訳
「暫定税率がなくなったのに、ガソリン価格が170円もするのはおかしい」という疑問には、税金の内訳を確認する必要がある。
実際、2025年12月31日にガソリンの暫定税率は廃止された。しかし、廃止されたのはガソリンに課されていた税金の上乗せ分であり、ガソリンに関係する税金すべてがなくなったわけではない。
2025年12月31日に何が変わった?
ガソリンには、揮発油税と地方揮発油税が課されている。暫定税率廃止前は、この2つを合わせて53.8円/Lだった。
その内訳は、本則税率28.7円と上乗せ分25.1円。2025年12月31日の廃止によって、上乗せ分の25.1円がなくなり、現在の税率は28.7円/Lになった。国税庁の税率変更に関する資料でも、同日からの適用が確認できる。
170.1円のうち税金はいくら?
2026年10月26日の全国平均170.1円/Lをもとに、ガソリン価格に含まれる税金を概算すると、次のようになる。
レギュラーガソリン1Lの価格構成
2026年10月26日・全国平均(税込み)
本体価格など
123.1円
揮発油税・地方揮発油税
28.7円
石油石炭税
2.8円
消費税
約15.5円
税金の合計
全国平均価格を基にした概算。端数処理により合計に差が出る場合がある。
つまり、170.1円のうち約47円が税金に相当する。割合にすると約27.6%だ。暫定税率が廃止された後も、ガソリン1Lには揮発油税等28.7円、石油石炭税2.8円、消費税が残っている。
消費税が税金にもかかるのは本当?
もう一つ、ガソリン価格で議論になりやすいのが、いわゆる「二重課税」問題だ。
ガソリンの消費税は、ガソリン本体の価格だけを対象に計算するわけではない。揮発油税や石油石炭税を含んだ販売価格に対して、標準税率10%の消費税が課される。
そのため、ガソリン税などの税金部分にも消費税相当額が含まれる。170.1円のケースでは、消費税約15.5円のうち、ガソリン税と石油石炭税に対応する部分は約3.2円になる。
これが消費者から「税金にまで税金をかけている」と批判される理由だ。制度上は、揮発油税等と消費税という別々の税目が、それぞれ異なる課税の仕組みに基づいて課されている。
暫定税率の廃止は確かに25.1円の負担軽減につながった。しかし、残存する税負担と、原油・為替・流通コストの上昇が重なれば、店頭価格が思ったほど安くならない事態は起こり得る。
【値上がりの本当の原因】中東情勢・原油価格・円安の三重構造
ガソリン価格を決めるのは税金だけではない。日本は原油の大部分を海外から輸入しているため、国際原油価格と為替レートの影響を強く受ける。
1. 中東情勢が原油価格を押し上げる
2026年のガソリン価格を大きく動かした要因の一つが、中東情勢の緊迫化だ。
原油は国際市場で取引されるため、産油地域で紛争や軍事的緊張が高まると、実際の供給量が減少する前から供給不安が価格に織り込まれる。
特に重要なのがホルムズ海峡だ。中東産原油の輸送に関わる重要な海上交通路であり、航行に支障が出る懸念が高まれば、原油の調達コストや輸送保険料などにも影響が及ぶ。
2026年10月29日のロイター通信によると、米国とイランの外交交渉への期待から原油先物は一時下落したものの、中東地域の供給途絶懸念や周辺施設への攻撃情報が相場の不安定要因となった。
同日の原油先物終値は、北海ブレントが1バレル114.88ドル、米国WTIが102.00ドルだった。原油市場が外交情勢や供給リスクに敏感に反応していることが分かる。
2. 円安になると輸入原油が高くなる
原油価格と同じくらい重要なのが為替レートだ。
原油は基本的に米ドル建てで取引される。日本の輸入事業者が原油を購入する際には、ドルを円に換算する必要がある。
例えば、1バレル100ドルの原油を購入する場合、為替が1ドル150円なら15,000円、1ドル160円なら16,000円になる。同じ原油価格でも、円安になるだけで1,000円の差が生まれる。
2026年10月29日のドル円相場は157円台後半で推移した。翌30日も157円前後の水準が続いている。原油価格が高い状況で円安が重なれば、日本国内のガソリン価格には二重の上昇圧力がかかる。
3. ガソリンスタンドの販売価格にもコストが乗る
海外から輸入した原油は、国内の製油所でガソリンなどに精製され、油槽所や輸送網を通じて各地のガソリンスタンドに届けられる。
この過程には、精製費用、輸送費、人件費、設備維持費、店舗運営費などが発生する。原油の価格だけで店頭価格が決まるわけではない。
さらに、原油価格が急上昇したときと下落したときでは、店頭価格への反映時期が異なる場合がある。ガソリンスタンドにはすでに仕入れた在庫があり、元売りの卸価格変更が即座に全店舗の販売価格へ反映されるわけではないからだ。
ここで重要なのは、値上がりがすべてガソリンスタンドの利益になっているわけではないということ。仕入れ価格や輸送費などが上昇していれば、販売価格を引き上げても利益率が改善するとは限らない。
価格を動かす要素の関係
中東情勢・国際原油市場
供給不安や原油の需給バランスが国際価格を変える
為替レート・輸入調達費用
ドル建て原油を円に換算し、国内調達コストが決まる
精製・卸売・輸送
製油所から給油所までのコストが加わる
税金・政府補助金
税率と補助単価が消費者の負担額に影響する
ガソリンスタンドの店頭価格
最終的に消費者が支払う金額
この構造を理解すれば、暫定税率がなくなっても、原油高や円安によってガソリン価格が再び上昇する理由が見えてくる。
【地域別比較と歴代最高値】なぜ同じガソリンなのに値段が違う?
全国平均170.1円という数字だけでは、実際のガソリン価格の実態を把握できない。都道府県ごとに比較すると、地域による違いがはっきりする。
2026年10月26日の都道府県別価格
資源エネルギー庁の調査を集計したデータでは、レギュラーガソリンの最安値は宮城県、最高値は長崎県だった。
最も安い地域
宮城県
全国平均
全国
最も高い地域
長崎県
最高・最低の価格差
出典:2026年10月26日調査の都道府県別価格。
この15.4円の差は、給油量が多いほど家計に影響する。
- 20L給油:308円の差
- 40L給油:616円の差
- 50L給油:770円の差
地域によって価格差が生まれる理由
主な理由は、輸送コストと地域内の競争環境だ。
製油所や油槽所から遠い地域では、ガソリンを運ぶための費用が上乗せされやすい。また、ガソリンスタンドの数が少ない地域では、店舗同士の価格競争が働きにくい場合もある。
長崎県のように離島を抱える地域では、地理的条件や輸送経路も価格に影響する。反対に、競合店舗が多く、物流網が発達した地域では、販売価格が抑えられやすい。
内閣府の地域課題分析でも、ガソリンや灯油の地域差について、国内輸送コストと小売店の経営規模・密度の違いが要因として挙げられている。
2026年3月には190.8円を記録
歴代最高値についても確認しておきたい。
資源エネルギー庁の2004年以降の週次データを比較すると、レギュラーガソリンの最高値は2026年3月16日の190.8円/Lだった。2008年の原油高局面を上回る水準であり、2026年の中東情勢が国内の燃料価格に与えた影響の大きさを示している。
一方、同じ2004年以降の統計で最も安かったのは2009年1月13日の106.0円/L。最高値との差は84.8円にもなる。
なお、これは2004年6月以降の週次統計における比較であり、日本のあらゆる時代の全価格記録を意味するものではない。
過去最高値を更新した後、政府補助金によって170円程度まで抑えられているという経緯を考えると、現在の価格が安定しているように見えても、エネルギー市場のリスクが消えたわけではない。
【2026年10月30日最新】ガソリン補助金はいつまで?今後の価格見通し
今後のガソリン価格を考えるうえで、10月29日に高市首相が発表した補助金政策の見直し方針は見逃せない。
政府はこれまで、ガソリンの全国平均価格を170円程度に抑えるために補助金を支給してきた。しかし、原油価格の高止まりによって補助金の負担が増え、制度を長期的に維持することが難しくなっている。
12月から毎月5円ずつ基準価格を引き上げる方針
2026年10月29日の首相官邸での会見で、高市首相は12月以降、原油価格の動向を注視しながら、春先に向けてガソリン価格の基準価格を毎月5円ずつ引き上げていくことを基本に対応すると表明した。
これは、現在の170円程度という価格抑制の基準を段階的に引き上げ、補助金による価格抑制を縮小していく方向性だ。
政府が補助金を完全に終了する具体的な時期については、首相自身が予断を持って答えることを避けている。したがって、毎月5円の基準価格引き上げ方針と、補助金の完全終了日は分けて考える必要がある。
政府の補助金負担はどれほど大きい?
首相官邸の10月29日の発表によると、2026年の緊急的激変緩和措置を含む燃料油支援の基金への支出は、2022年の支援開始以降で累計約9.6兆円に達した。高市内閣発足後の支出も約1.4兆円となっている。
また、政府は現在、1日当たり100億円を超えるペースで価格抑制に国費を投入していると説明した。
消費者にとって補助金はありがたい制度だが、その財源は税金だ。ガソリン価格を抑えることと、将来にわたって財政負担を維持することの両立が政策課題になっている。
今後のガソリン価格を左右する3つのシナリオ
シナリオ1:原油価格が下落する
中東情勢が落ち着き、原油価格が下がれば、補助金縮小による値上げ圧力を一部相殺できる。円高も進めば、さらに価格低下が期待できる。
シナリオ2:原油価格が高止まりする
補助金の基準価格引き上げが店頭価格に反映され、ガソリン価格が段階的に上昇する可能性がある。
シナリオ3:原油高と円安が同時進行する
輸入コストの増加と補助金縮小が重なり、家計にとって厳しい価格上昇となる可能性がある。
いずれも条件付きの見通しであり、価格が必ず特定の水準に到達するという予測ではない。
特に注意したいのは、政府が示した毎月5円という数字を、そのまま全国の全店舗で一律5円の値上げが起きると解釈しないことだ。実際の店頭価格には原油価格、為替、卸売価格、在庫、店舗ごとの競争状況も反映される。
【ガソリン値上げがおかしい】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:暫定税率が廃止されたのに、なぜガソリン価格は170円もするのですか?
A1:2025年12月31日に廃止されたのは、1L当たり25.1円の暫定税率分だけです。揮発油税などの本則税率28.7円、石油石炭税2.8円、消費税は引き続き課されています。また、2026年の中東情勢による原油高と円安も価格を押し上げる要因です。
Q2:ガソリン補助金52.4円は、なぜ店頭価格から直接引かれないのですか?
A2:補助金は消費者ではなく、石油元売り・輸入事業者に支給されます。卸価格を抑えることで、ガソリンスタンドの仕入れ負担を軽減し、小売価格の上昇を抑える制度です。また、52.4円は2026年10月29日から適用される支給単価で、10月26日の価格調査週の支給単価42.8円とは異なります。
Q3:2026年12月以降、ガソリン価格は値上がりしますか?
A3:政府は12月から春先に向けて、価格抑制の基準価格を毎月5円ずつ引き上げる方針を示しています。そのため、原油価格などが変わらなければ、店頭価格にも上昇圧力がかかると考えられます。ただし、補助金の完全終了時期や具体的な価格は決まっていません。
まとめ:ガソリン値上げがおかしいと感じる理由と今後の判断基準
2026年10月26日のレギュラーガソリン全国平均170.1円/L、10月29日以降の補助金52.4円/L、そして2025年12月31日の暫定税率廃止。この3つの数字を並べると、ガソリン価格に対する消費者の疑問が生まれる理由が見えてくる。
今回の検証で押さえておきたいのは、次の5点だ。
- 10月26日の全国平均170.1円は前週より0.1円安く、1年前よりも3.4円安い。
- 52.4円の補助金は10月29日からの支給単価であり、10月26日の価格と同じ週の数字ではない。
- 暫定税率25.1円は廃止されたが、ガソリン税28.7円や消費税などは残っている。
- 中東情勢、国際原油価格、円安、国内の輸送費が店頭価格を左右する。
- 2026年12月から補助金の価格抑制基準を段階的に引き上げる方針が示されている。
【プロの結論】本当に注目すべきなのは店頭価格だけではない
ガソリン価格がおかしいと感じたとき、単純に「税金がなくなったのに高い」「補助金が52.4円あるのに安くならない」と判断するだけでは、価格の実態を正しく把握できない。
見るべきなのは、全国平均価格、適用期間ごとの補助金支給単価、原油価格、為替レート、税率の5つだ。
特に、政府が発表する補助金の数字には適用開始日がある。全国平均の調査日と補助金の適用期間を揃えて比較しなければ、実際の政策効果を読み違えてしまう。
今後は12月以降の補助金縮小が、家計にとって大きな注目点になる。原油価格が落ち着くのか、円安が進むのか、政府がどこまで価格抑制を続けるのか。これらの動きを合わせて確認することが、ガソリン代の負担を予測するうえで欠かせない。
ガソリン価格に対する違和感は、決して単なる気のせいではない。税金が下がっても、原油高や為替変動、補助金政策によって消費者の負担が変わるという、エネルギー価格の複雑な構造が背景にある。
大切なのは、目の前の値札だけでなく、その価格が何によって決まっているのかを見極めることだ。 (出典: ガソリン 値上げ おかしい(Yahoo!ニュース))
井上 大輝 (Daiki Inoue)
SEOスペシャリスト最新のトレンドや話題のニュースをわかりやすく解説するWebライターです。読者の皆様に役立つ情報を日々お届けしています。
この著者の記事一覧を見る