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【事故現場はどこ?】矢部雨水幹線の耐震化工事で何が行われていたのか

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事故が起きたのは、相模原市中央区で進められていた「公共下水道管きょ耐震化工事(R6-4工区)」の現場だ。工事の対象となったのは、県道507号(相武台相模原線)の地下に埋設されている矢部雨水幹線である。

この工事は、地震によって下水道管が損傷した場合でも排水機能を維持し、緊急輸送道路として指定されている県道の機能を確保することを目的としていた。つまり、市民生活と災害対応を支える重要なインフラ整備だった。

相模原市の事故検証報告書によると、工事の概要は次のとおりだ。

  • 発注者:相模原市
  • 受注者:三伸建設株式会社
  • 工事延長:約151.4メートル
  • 管の断面:縦3メートル・横3メートル
  • 施工内容:既設管内部の管きょ更生工事
  • 契約期間:2024年6月28日~2025年3月10日

施工では、既設の雨水管の内部にライニング材などを設置し、新しい管を構築する工法が採用されていた。事故当日は、材料の搬入やフレーム、ライニング材の組み立て作業が進められていた。

なお、事故現場の住所表記には注意が必要だ。相模原市の初報では中央区陽光台3丁目付近と案内された一方、市の検証報告書では工事場所を陽光台3丁目、事故発生場所を光が丘1丁目と整理している。工事区域と事故発生地点の表記を区別して理解する必要がある。

【時系列で検証】2024年9月19日、作業員2人が死亡するまでの経緯

相模原市下水道工事事故
【画像】相模原市 下水道工事 事故 関連ショット

事故当日の気象状況を確認すると、単に雨が降ったという規模ではなかったことが分かる。

相模原市の検証報告書によると、当日は大気の状態が不安定になり、東京都多摩西部で発達した積乱雲が神奈川県方面へ移動。その後、新たな積乱雲も発生し、相模原市周辺で局地的な大雨となった。

工事現場の北側に位置する相模原消防署では、15時30分から16時10分までの40分間に合計33ミリの雨量を観測。15時48分には大雨注意報が発表されていた。

事故当日の動きを整理すると、避難を開始してから水位が急上昇するまでの時間が極めて短かったことが分かる。

日時発生した出来事確認できる状況
15時30分頃降雨開始相模原消防署で雨を観測
15時37分頃雨雲を確認地上監視員が黒い雨雲の接近を目視
15時40分頃作業終了を伝達地上監視員が地下へ入り、作業員に直接伝達
15時48分大雨注意報気象情報として大雨注意報が発表
15時55分頃避難中に増水マンホール付近で水位が急上昇し、2人が流される
16時00分頃地上への脱出残る6人が地上に避難
16時29分119番通報現場代理人が消防に通報
16時40分頃消防隊到着下水道管内や下流河川で捜索開始
9月22日8時50分頃2人を発見相模川の磯部頭首工付近で遺体を発見

避難開始から数分で水位が膝の高さまで上昇

相模原市下水道工事事故
【画像】相模原市 下水道工事 事故 関連ショット

特に注目すべきなのが、15時55分頃の状況だ。

市の報告書によると、作業員らは下水道管から脱出するため、出入口として使用していた人孔(マンホール)の直下に集まっていた。

当初、水位は通常と変わらない約10センチだった。先に2人が地上へ上がり、台車や工具類を引き上げた後、3人目が脱出した時点でも水位に大きな変化はなかった。

ところが、4人目が上がろうとした段階で、水位は膝の高さまで上昇。その後、2人が激しい雨水に流された。

残る6人は16時頃までに地上へ脱出したものの、流された2人は下水道管内から下流へ押し流された。

消防などによる捜索は、現場から姥川、鳩川、相模川へと広がった。事故当日には発見できず、9月22日午前、現場から約6キロ離れた相模川で2人の遺体が発見された。市の検証報告書では、亡くなった作業員は37歳と46歳の男性とされている。

この事故の重大な教訓は、地下の水位が平常時と変わらないように見えても、上流域の降雨によって状況が一変する可能性があるという点だ。現場付近の天候だけを確認する従来型の管理では、雨水管内部の危険を十分に捉えられない。

【避難警報の変更と周知不足】トランシーバーの不具合が浮き彫りにした問題

相模原市下水道工事事故
【画像】相模原市 下水道工事 事故 関連ショット

事故の検証で大きな焦点となったのが、地上と地下をつなぐ連絡手段だった。

本来、現場ではトランシーバーと警報音付き回転灯を使い、地下で作業する人たちに危険を知らせる計画だった。しかし、実際には通信機器に不具合が生じていた。

事故前から確認されていたトランシーバーの異常

相模原市の検証報告書には、通信機器の不具合について具体的な経過が記されている。

  • 2024年9月9日:管内でトランシーバーを使用した際、ノイズが発生。
  • 9月17日:メーカー立ち会いの下で不具合を確認。
  • 9月20日:不具合解消用の部品が届く予定だった。
  • 9月19日:事故当日、トランシーバーは現場に置かれていなかった。

その結果、地上監視員は地下に入って作業員へ直接声をかける方法で作業終了を伝えた。

ところが、地上監視員自身が地下へ入ったことで、地上に気象情報を継続的に収集する担当者がいなくなった。大雨注意報などの情報を地下の作業員へ伝える体制も十分に機能しなかった可能性が、市の報告書で指摘されている。

警報手段の変更を周知していなかった疑い

さらに、2025年8月25日には、事故を巡って新たな動きがあった。

相模原労働基準監督署は、元請けの三伸建設と同社の現場監督を務めていた40代男性を、労働安全衛生法違反の疑いで書類送検した。

共同通信などの報道によると、送検容疑は、出水のおそれがある場合に作業員へ避難を呼びかける警報手段を変更したにもかかわらず、その変更を関係する作業員に周知していなかったというものだ。

当初はトランシーバーとサイレンで危険を知らせる予定だったが、機器の異常が判明したため、直接声をかける方法に変更されていたとされる。

この問題の本質は、単に通信機器が故障したことだけではない。代替手段を採用した場合、その方法が誰に、どのように伝わり、どの行動につながるのかまで確認する必要があった。

市の検証報告書でも、警報音付き回転灯が事故当時に作動していなかった可能性や、警報を聞いた際にどう行動するかという共通ルールが明確でなかったことが課題として挙げられている。

また、事故当日の朝礼では避難ルートの周知が行われていなかったこと、救命胴衣や救命浮き輪が設置されていなかったことも指摘された。

ただし、市の委員会は中間報告の段階で事故原因を一つに特定していない。気象情報の収集、連絡手段、避難判断、安全意識など複数の要因が重なった可能性を整理している。

【三伸建設の書類送検】労働安全衛生法違反の疑いと2026年の状況

2025年8月25日の書類送検は、事故の責任を考えるうえで重要な節目となった。

送検対象となったのは、工事の元請けである三伸建設株式会社と、現場代理人を務めていた40代男性だ。

問題となった法律と義務

神奈川労働局の公表資料では、関係する法令として労働安全衛生法第30条と労働安全衛生規則第642条が記載されている。

この規定は、複数の請負業者が同じ現場で作業する場合などに、元方事業者が統一的な安全管理体制を整え、緊急時の警報について関係する請負人へ周知する措置を講じることに関係している。

今回の送検で問われたのは、出水のおそれがある場合の統一的な警報について、関係請負人に周知させる措置を講じていなかった疑いだ。

書類送検と有罪判決は別のもの

ここで注意したいのは、書類送検は有罪判決を意味しないという点である。

書類送検とは、警察や労働基準監督署などの捜査機関が事件に関する書類や証拠を検察官へ送る手続きだ。その後、検察官が起訴するか不起訴にするかなどを判断する。

2026年5月1日更新の神奈川労働局の労働基準関係法令違反に係る公表一覧には、三伸建設の事案が2025年8月25日付の送検事案として掲載されている。

同一覧で確認できるのは送検日と違反の概要であり、その後の起訴・不起訴や裁判の結果までは記載されていない。したがって、2026年10月時点で公表資料から確認できる範囲では、書類送検と刑事責任の確定を混同しないことが大切だ。

また、今回の送検は警報の周知措置に関する疑いを対象としたものであり、事故に関するすべての責任や原因が司法判断によって確定したという意味ではない。

【2026年最新】相模原市が改定した下水道工事の安全ルールと再発防止策

事故を受け、相模原市は2024年10月に「下水道工事での事故を踏まえた公共工事の安全対策検討委員会」を設置した。

委員会には、労働安全衛生、気象、下水道事業の専門家らが参加。2024年10月30日、11月29日、12月23日の計3回にわたって会議を開き、事故の経緯と再発防止策を検討した。

そして12月26日には、安全対策報告書の中間とりまとめを公表。翌年度の工事発注に向け、土木工事共通特記仕様書の見直しなどを進める方針を示した。

2025年4月1日から局地的大雨への対策を強化

最初の大きな制度変更は、2025年4月1日に実施された「土木工事共通特記仕様書」の改定だ。

これまで現場ごとに受注者側へ委ねられていた局地的大雨時の作業中止基準を明確化。さらに、作業現場だけでなく周辺地域や上流域の気象状況を監視する警戒区域を設けた。

2025年4月のタウンニュースの報道では、警戒区域は作業箇所から原則半径10キロメートルとされ、リアルタイムの気象情報配信サービスや上流部への雨量計設置なども対策に盛り込まれた。

2026年10月時点で確認できる最新の安全基準

相模原市が公表している2026年7月1日適用の土木工事共通特記仕様書には、局地的大雨に対する安全対策の具体的な規定が掲載されている。

同仕様書の更新履歴では、局地的大雨対策の特記仕様書について2026年4月1日と5月29日の改定が確認できる。市の公開ページは2026年7月6日更新で、10月30日時点ではこの7月版が確認できる最新の統合版となっている。

特に重要なルールは以下のとおりだ。

  • 作業中止基準:作業場所または上流部などで降雨・雷が発生した場合や、レベル2氾濫注意報、レベル2大雨注意報、レベル2土砂災害注意報以上の気象情報が発表された場合などは作業を中止する。
  • 警戒区域:作業箇所を中心に原則半径10キロメートル以上の範囲を設定する。
  • 地上監視員:地下作業中は地上監視員を常時配置し、雨雲や気象情報を監視する。
  • 気象情報の収集:民間気象会社のプッシュ型配信サービスや上流部の雨量計などを活用する。
  • 水位監視:作業箇所や上流部の水位変化を把握するため、水位計の設置に努める。
  • 避難経路:原則として複数の退避ルートを設定し、実際の現場環境に応じた避難訓練を実施する。
  • 通信設備:複数の情報伝達手段を確保し、作業開始前に機器の動作確認を行う。
  • 救命設備:親綱、救助用ロープ、縄梯子、救命胴衣などを現場の特性に応じて設置・携帯する。

注目したいのは、雨が降り始めてから判断するのではなく、作業場所や上流域での降雨・雷の情報を早い段階で捉え、避難準備を始める仕組みになっていることだ。

また、作業の再開にも条件がある。現場や上流部で降雨・雷が発生しておらず、対象となる気象情報が解除され、作業箇所の水位が事前調査に基づく通常水位に戻っていることなどを確認しなければならない。

さらに、避難指示が出た場合には、資材や工具の回収を優先せず、作業を中断して人命を最優先に退避することが明文化されている。

単なる注意喚起ではなく、作業中止・避難・再開までを一連の安全管理として規定した点が、事故後の大きな変化だ。

【再発防止に残された課題】ルールの改定だけで命を守れるのか

相模原市が進めてきた安全対策は、事故前と比較して具体性が増している。とはいえ、仕様書を改定しただけで現場の安全が保証されるわけではない。

今回の事故から見えてくる課題は、大きく4つに整理できる。

1. 気象情報を集めるだけでなく、避難判断に結び付ける

事故当日は、朝礼時に午後の降雨予報が確認され、昼休憩時にも15時頃に1ミリ毎時程度の降雨予報が把握されていた。

しかし、その後の急激な気象変化を現場全体で共有し、迅速な避難につなげる体制は十分ではなかった。

現在の仕様書が上流域の降雨や雷まで監視対象としているのは、この反省を踏まえたものだ。下水道管内では、現場に雨が降っていなくても上流の雨水が流れ込むため、広域的な監視が欠かせない。

2. 通信機器が故障しても警報を届けられる仕組みをつくる

トランシーバーが使えなくなった場合、声かけだけに依存する体制では、地下の奥まで確実に情報を届けられるとは限らない。

そのため、通信機器の複数化、警報音付き回転灯の運用基準、動作確認、代替手段の周知を組み合わせる必要がある。

大切なのは、機器が正常に作動するかだけではない。地上から地下の作業員まで、警報が実際に届き、内容を理解できるかを確認することだ。

3. 避難訓練で実際の脱出時間を検証する

地下の下水道管は、マンホールの位置や作業距離、管内の障害物などによって避難に必要な時間が異なる。

そのため、避難経路を紙に記載するだけでは不十分だ。現場の作業員数や設備配置を踏まえ、実際にどのくらいの時間で地上へ出られるのかを検証する必要がある。

現行の仕様書では、代表的な作業箇所を選び、作業着手前および作業着手後に月1回以上の避難訓練を実施することなどが規定されている。

4. 外国人労働者や新規入場者にも伝わる安全教育

市の検討委員会では、外国人労働者への安全衛生管理も議題となった。

2026年版の特記仕様書には、外国人労働者への安全衛生教育について、母国語に翻訳した教材や動画、音声翻訳アプリ、「やさしい日本語」などを活用することが盛り込まれている。

緊急時の避難指示は、誰もが即座に理解できなければ意味がない。経験年数や国籍にかかわらず、全員が同じ警報を同じ行動につなげられる仕組みが求められる。

なお、相模原市は事故後の2024年10月3日に緊急安全講習会を開催し、11月19日には下水道工事に関する安全講習会も実施した。後者には建設関連事業者63人、市職員41人の合計104人が参加している。

こうした教育を継続し、改定された仕様書が各現場で実際に守られているかを確認することが、次の課題となる。

【相模原市下水道工事事故に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:相模原市の下水道工事事故はいつ発生しましたか?
2024年9月19日午後4時半頃です。相模原市中央区の下水道耐震化工事中に大雨による急激な増水が発生し、作業員2人が流されました。

Q2:亡くなった作業員は何歳でしたか?
相模原市の検証報告書によると、亡くなったのは37歳と46歳の男性です。2人は9月22日に相模川で発見されました。

Q3:事故の原因はトランシーバーの故障だけですか?
いいえ。市の中間報告では、トランシーバーの不具合だけでなく、気象情報の収集不足、避難ルートの周知不足、警報設備の運用、救命設備など複数の課題が挙げられています。委員会は原因を一つに特定していません。

Q4:三伸建設は逮捕・起訴されたのですか?
確認できるのは、2025年8月25日に三伸建設と現場監督が労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されたことです。書類送検は有罪判決を意味しません。2026年5月1日更新の神奈川労働局の公表資料には送検記録がありますが、その後の司法判断は同資料には掲載されていません。

Q5:相模原市は事故後にどのような対策を導入しましたか?
2025年4月1日に土木工事共通特記仕様書を改定し、局地的大雨に対する作業中止基準や原則半径10キロメートル以上の警戒区域を設定しました。2026年版の現行仕様書では、複数の通信手段、地上監視員、雨量・水位監視、避難訓練なども具体的に規定されています。

Q6:2026年現在、再発防止策は完了していますか?
市は仕様書の改定や安全講習などを進めています。ただし、制度が整備されたことと、すべての現場で確実に実施されていることは別です。現場での履行確認や避難訓練の実効性を継続的に検証する必要があります。

まとめ:相模原市下水道工事事故が残した教訓と今後の安全管理

2024年9月19日に発生した相模原市の下水道工事事故は、局地的大雨による急激な増水が地下作業の安全を一瞬で脅かすことを示した重大事故だった。

事故の背景には、トランシーバーの不具合、警報手段の変更と周知、気象情報の収集、避難判断など、複数の安全管理上の課題があった。2025年8月には三伸建設と現場監督が書類送検され、警報の周知を巡る法令違反の疑いも明らかになった。

一方、相模原市は公共工事安全対策検討委員会の報告を踏まえ、2025年4月の仕様書改定を実施。2026年にはさらに改定を重ね、降雨・雷への作業中止基準、10キロメートル以上の警戒区域、複数の通信手段、避難訓練などを具体化している。

今後、再発防止の実効性を判断するうえで注目すべきなのは、次の3点だ。

  • 気象監視の実効性:作業場所だけでなく上流域の降雨や水位をリアルタイムで把握できているか。
  • 避難指示の確実性:通信機器の故障時にも、すべての作業員へ警報を伝えられるか。
  • 現場でのルール遵守:作業中止基準や避難訓練が書類上だけでなく、実際の行動として定着しているか。

公共下水道の耐震化は、地震から市民生活を守るために欠かせない事業だ。しかし、インフラを守るための工事で、働く人の命が危険にさらされてはならない。

今回の事故を一過性の出来事として終わらせず、発注者・元請け・下請けのそれぞれが安全管理の責任を果たし、現場で確実に機能する仕組みを維持できるか。2026年以降も、相模原市の公共工事における安全対策の運用と検証が問われている。

(出典: 相模原市 下水道工事 事故(Yahoo!ニュース))

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相模原市下水道工事事故

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伊藤 美咲 (Misaki Ito)

伊藤 美咲 (Misaki Ito)

デジタルマーケター

テクノロジーやライフスタイル領域を中心に執筆活動を行っています。趣味は写真撮影と旅行です。

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