【延命治療の種類】人工呼吸器・心肺蘇生・胃ろうなど具体的な処置を解説
延命治療には、呼吸、心臓の働き、水分・栄養の補給など、人間が生命を維持するために必要な機能を医療技術で補う方法があります。
重要なのは、延命治療という言葉が、特定の医療行為を指す正式な病名や一つの治療法ではないという点です。回復を目指して一時的に生命を支える治療もあれば、回復が難しい状態で生命を維持することを目的とする処置もあります。
1.人工呼吸器による延命措置
呼吸機能を機械で補助する治療
人工呼吸器は、自力で十分な呼吸ができない患者に対して、機械を使って肺に空気を送り、酸素の取り込みや二酸化炭素の排出を助ける医療機器です。
主に次のような場面で使用されます。
- 重症肺炎や呼吸不全で十分な呼吸ができない場合
- 脳卒中や神経疾患などで呼吸筋の働きが低下した場合
- 手術後や重症疾患の治療中に呼吸を補助する場合
- 意識障害によって自力で呼吸を維持できない場合
人工呼吸器には、気管にチューブを挿入する侵襲的人工呼吸と、マスクを使用する非侵襲的人工呼吸があります。
侵襲的人工呼吸では、長期間の管理が必要な場合に気管切開を行うこともあります。
メリットは、呼吸を維持し、肺や全身の状態が回復するまで生命を支えられることです。急性の病気であれば、人工呼吸器を使用した後に自力呼吸へ戻れる可能性もあります。
一方、長期間の使用では、肺炎などの感染症、気道への負担、鎮静による意識への影響、身体を自由に動かしにくいことなどが問題になります。
また、人工呼吸器を装着しているからといって、必ず意識がないわけではありません。意識が保たれた状態で人工呼吸器を使用する患者もいます。
2.心肺蘇生と心臓マッサージ
心肺蘇生(CPR)は、心臓が停止した患者に対して、血液の循環と酸素供給を再開させるために行う救命処置です。
主な処置には次のものがあります。
- 胸骨圧迫(一般に心臓マッサージと呼ばれる処置)
- 人工呼吸
- AEDや医療用除細動器による電気ショック
- 気管挿管などによる気道確保
- 心臓の働きを助ける薬剤の投与
日本医師会が紹介する心肺蘇生法でも、胸骨圧迫は強く、速く、絶え間なく行うことが基本とされています。
心肺蘇生の目的は、単に心臓を動かすことではありません。血液の循環を取り戻し、脳を含む重要な臓器への血流を確保し、回復につなげることです。
ただし、心拍が再開しても、脳への酸素供給が長時間途絶えていた場合などには、意識や身体機能が元に戻らない可能性があります。
また、胸骨圧迫による肋骨骨折などの身体的損傷が生じる場合もあります。
心肺蘇生を希望するかどうかは、本人の病状や回復可能性、本人が望む生活などを踏まえて考える必要があります。
3.胃ろう・経管栄養・人工栄養
食べ物を口から十分に摂取できなくなった場合に、人工的に水分や栄養を補給する方法があります。
代表的なものが胃ろうです。
胃ろうは、腹部から胃に小さな通路を作り、専用のチューブを通して栄養剤や水分を補給する方法です。
主に、嚥下障害や神経疾患、脳血管障害などによって、口から食べることが難しくなった患者に使用されます。
人工的な栄養補給には、胃ろう以外にも次の方法があります。
- 経鼻経管栄養: 鼻から胃などにチューブを挿入して栄養を補給する。
- 胃ろう栄養: 腹部から胃にチューブを通して栄養を補給する。
- 中心静脈栄養: 中心静脈から高濃度の栄養輸液を投与する。
- 末梢静脈栄養: 腕などの末梢静脈から栄養を補給する。
これらはすべて同じものではありません。患者の消化管の状態、栄養状態、病気の回復可能性などによって適した方法が異なります。
胃ろうのメリットは、口から十分に食べられない患者に水分や栄養を届けられることです。状態によっては栄養状態の改善や身体機能の回復が期待できます。
一方、胃ろうを設置しても、必ず誤嚥性肺炎を防げるわけではありません。下痢、嘔吐、感染、チューブのトラブルなどが生じる可能性もあります。
日本老年医学会の2012年のガイドラインは、人工的水分・栄養補給法(AHN)について、導入すること自体を目的にせず、本人にとっての利益と負担を個別に検討する考え方を示しています。
特に、認知症が進行した高齢者や、回復が難しい患者では、栄養補給によって生命が維持されることと、本人にとって望ましい生活が実現することを分けて考える必要があります。
4.その他の生命維持に関わる治療
延命治療と関連して検討される医療行為には、次のようなものもあります。
- 人工透析: 腎臓の機能が低下した患者の血液から老廃物や余分な水分を取り除く。
- 昇圧薬: 血圧が著しく低下した患者の循環を維持する。
- 輸液: 水分や電解質を補給する。
- 抗菌薬: 細菌感染症を治療する。
- 輸血: 血液成分を補い、酸素運搬能力や止血機能などを支える。
これらは、通常の病気の治療として行われることもあります。
例えば、人工透析は慢性腎不全の患者が長期間生活するための治療にもなります。人工呼吸器も、回復までの一時的な補助として使用される場合があります。
そのため、医療機器や治療の名称だけで延命治療かどうかを決めるのではなく、何を目的に、どのような状態で使用するのかを確認することが大切です。
【メリット・デメリットを比較】延命治療を受けると何が変わる?
延命治療を受ける最大のメリットは、生命を維持できる可能性が高まることです。しかし、生命が維持された後にどのような状態で生活できるかは、病気の種類や重症度によって異なります。
延命治療の主なメリット
1.回復する可能性を残せる
急性疾患や一時的な臓器機能の低下であれば、人工呼吸器や透析などによって身体の機能を補い、回復を待つことができます。
治療を行わなければ生命に関わる状態でも、適切な処置によって再び日常生活に戻れる可能性があります。
2.家族と過ごす時間を確保できる
治療によって生命が維持されれば、本人と家族が話し合ったり、会ったりする時間を確保できる場合があります。
3.治療の選択肢を広げられる
一時的に呼吸や循環を補助することで、手術や薬物療法など、次の治療につなげられる場合があります。
延命治療の主なデメリット
1.身体的な負担が生じる
人工呼吸器の装着、チューブの挿入、長期臥床などによって、痛みや不快感、感染症、身体機能の低下などが起こる可能性があります。
2.意識や生活の質が回復しない場合がある
生命を維持できても、重い脳障害や神経障害が残ることがあります。
意思疎通が難しくなったり、食事や排泄などに継続的な介助が必要になったりする場合もあります。
3.本人の希望と異なる状態になる可能性がある
本人が望んでいたのは、できる限り自宅で過ごすことだったのかもしれません。
しかし、医療機器による管理が長期間必要になると、希望する療養場所や生活スタイルを実現しにくくなる場合があります。
4.家族の精神的・経済的負担が生じる
治療の選択に対する迷いや後悔、介護負担、療養環境の調整など、家族にもさまざまな影響があります。
延命治療と緩和ケアは何が違う?
延命治療と混同されやすいのが緩和ケアです。
緩和ケアは、病気による痛みや息苦しさ、不安、精神的な苦痛などを軽減し、本人と家族の生活の質(QOL)を高めるための医療・ケアです。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 延命治療 | 緩和ケア |
|---|---|---|
| 主な目的 | 生命維持や生命予後の改善 | 苦痛の軽減とQOLの向上 |
| 具体例 | 人工呼吸器、心肺蘇生、人工栄養 | 疼痛管理、呼吸困難の緩和、心理的支援 |
| 実施時期 | 病状や治療目的による | 診断早期から終末期まで |
| 回復への期待 | 治療内容や病状によって異なる | 生活の質や苦痛の改善を重視 |
| 併用 | 緩和ケアと併用できる | 積極的治療と併用できる |
大切なのは、緩和ケアが「治療を諦めた人だけが受ける医療」ではないことです。
国立がん研究センターのがん情報サービスでは、緩和ケアはがんと診断されたときから受けられ、がん治療と同時に行うこともできると説明しています。
痛みを抑えながら抗がん剤治療を続けたり、呼吸困難を軽減しながら必要な治療を受けたりすることも可能です。
【延命治療にかかる費用】保険適用と2026年の高額療養費制度
延命治療を検討するとき、家族にとって大きな心配の一つが医療費です。
人工呼吸器、心肺蘇生、胃ろう、経管栄養などは、実施する医療行為や入院期間、使用する医療材料、患者の保険資格などによって費用が異なります。
そのため、延命治療全体に共通する一律の料金はありません。
治療費を左右する主な項目
| 費用の項目 | 金額を左右する要素 |
|---|---|
| 人工呼吸器 | 使用期間、管理内容、入院環境 |
| 心肺蘇生 | 救急処置、薬剤、集中治療の内容 |
| 胃ろう | 造設手術、入院期間、栄養剤や管理 |
| 経管栄養 | 栄養剤、チューブ管理、医療処置 |
| 中心静脈栄養 | カテーテル管理、輸液、感染対策 |
| 長期入院 | 入院基本料、治療内容、病室の条件 |
健康保険が適用される医療行為については、年齢や所得などに応じた自己負担割合が適用されます。
さらに、医療費が一定の上限を超えた場合には、高額療養費制度を利用できます。
2026年8月からの高額療養費制度の変更
厚生労働省によると、2026年8月から高額療養費制度の見直しが実施されています。
例えば、70歳未満で年収約370万円から約510万円の所得区分に該当する場合、医療費が100万円かかったときの自己負担額は、制度上、約9万3,000円まで抑えられる例が示されています。
また、2026年8月からは年間上限も導入され、長期療養者の負担軽減が図られています。
2027年8月には所得区分の細分化など、次の見直しも予定されています。
ただし、この約9万3,000円という金額は、特定の所得区分における制度上の例です。延命治療を受ける人全員の自己負担額ではありません。
また、差額ベッド代、入院時の食事代、保険適用外のサービスなどは別途負担になる場合があります。
長期間の療養で確認したいこと
延命治療を継続する場合、1か月の医療費だけでなく、数か月から数年単位の生活費や介護費用も考える必要があります。
特に確認したいのは次の項目です。
- 健康保険の自己負担割合
- 高額療養費制度の適用条件
- 多数回該当の対象になるか
- 年間上限の対象になるか
- 入院から施設・在宅療養へ移る場合の費用
- 介護保険サービスの利用可能性
病院の医療ソーシャルワーカーや地域連携室に相談すれば、治療費だけでなく、退院後の療養環境や介護サービスについても相談できます。
【延命治療を受けない選択と中止】本人の意思・DNAR・法的問題
延命治療は、すべての患者が必ず受けなければならないものではありません。
本人が十分な説明を受けたうえで、特定の治療を希望しない意思を示すことも、医療における重要な選択肢です。
ただし、「延命治療を拒否する」という意思表示には、具体的な内容が必要です。
延命治療を受けないことはできる?
本人が意思決定できる状態であれば、医師から治療内容や予想される結果について説明を受け、自分の価値観に基づいて治療を受けるかどうかを判断します。
例えば、次のような希望があります。
- 心停止した場合は心肺蘇生を希望しない
- 人工呼吸器による長期的な生命維持は希望しない
- 胃ろうなどによる人工栄養を希望しない
- 痛みや息苦しさを抑える緩和ケアを優先したい
- 回復の見込みがある場合には一時的な集中治療を希望する
ここで重要なのは、治療を受けない選択と、必要な医療やケアをすべて拒否することは違うという点です。
人工呼吸器を希望しなくても、酸素投与や痛みを抑える薬、口腔ケア、心理的支援などを受けることは可能です。
DNARと蘇生処置拒否の違い
DNARとは、Do Not Attempt Resuscitationの略で、心停止時に心肺蘇生を試みないという医療上の指示を意味します。
日本集中治療医学会の2016年の勧告では、DNAR指示について重要な注意点が示されています。
DNARは、心停止時の心肺蘇生を行わないという指示であり、それ以外の通常の医療や看護を中止する指示ではありません。
例えば、DNARの患者であっても、次の医療行為を自動的に中止してよいわけではありません。
- 酸素投与
- 抗菌薬の投与
- 人工呼吸器による呼吸管理
- 輸液
- 栄養補給
- 鎮痛や鎮静
- 集中治療室での治療
これらは、それぞれ個別に医学的な必要性や本人の希望を検討する必要があります。
| 項目 | DNAR | 延命治療全体に関する意思表示 |
|---|---|---|
| 対象 | 心停止時の心肺蘇生 | 人工呼吸器、栄養、透析など個別の治療 |
| 内容 | 蘇生処置を試みない | 希望する治療・希望しない治療を決める |
| 他の医療 | 自動的には中止されない | 治療ごとに検討する |
| 再確認 | 状態に応じて必要 | 本人の意思や病状に応じて必要 |
DNARと延命治療全体の拒否を同じ意味で使うことは、医療現場で誤解を招く原因になります。
延命治療の中止は法律上認められている?
延命治療の中止や差し控えを考える際には、法的な問題も避けて通れません。
日本では、人生の最終段階における医療・ケアについて、厚生労働省のガイドラインに基づいた意思決定のプロセスが示されています。
2018年3月に改訂されたガイドラインでは、次の原則が重視されています。
1. 本人の意思決定を基本とする。
2. 医療・ケアチームが医学的妥当性を踏まえて判断する。
3. 痛みや不快な症状を緩和し、本人と家族を支援する。
4. 本人の意思は変化する可能性があるため、繰り返し話し合う。
5. 本人の意思を確認できない場合は、本人の推定意思や最善の利益を慎重に検討する。
このガイドラインでは、生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は対象外とされています。
一方、延命措置の中止については、あらゆる状況に適用できる包括的な免責法が整備されているわけではありません。
裁判所の公的資料でも、延命措置の中止等について確立した司法判断の枠組みがあるとはいえず、個別の事情に応じて慎重な判断が求められる状況が示されています。
ここで区別したいのが、治療の差し控え・中止と積極的安楽死です。
- 治療の差し控え・中止: 医学的妥当性、本人の意思、本人にとっての利益などを踏まえて、特定の医療行為を開始しない、変更する、または終了すること。
- 積極的安楽死: 生命を短縮させることを意図して、薬剤投与などによって死をもたらすこと。
両者は同じものではありません。
また、本人が希望しない治療を家族が一方的に中止できるわけでもありません。治療の変更や中止は、本人の意思や医学的な見通しを確認し、医療・ケアチームと話し合って進める必要があります。
【家族が判断する方法】ACP(人生会議)と事前意思表示の進め方
本人が意識を失ったり、認知機能の低下などによって意思を伝えられなくなったりした場合、家族は難しい判断を迫られることがあります。
「本人は人工呼吸器を望んでいたのだろうか」
「胃ろうを造設してでも生きていたかったのだろうか」
「苦痛が大きい治療を続けることが本人の幸せなのだろうか」
こうした疑問に、家族だけで答えを出すのは簡単ではありません。
そこで重要になるのが、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)、日本語で「人生会議」と呼ばれる取り組みです。
ACP(人生会議)とは?
ACPとは、将来、自分で医療やケアについて意思表示できなくなる可能性に備え、本人が大切にしている価値観や希望を家族、信頼できる人、医療・介護関係者と繰り返し話し合うプロセスです。
単に延命治療を受けるかどうかを決めるだけではありません。
例えば、次のようなことを話し合います。
- どのような生活を大切にしたいか
- 意識や身体機能が回復しない場合、どのような医療を望むか
- 心肺蘇生を希望するか
- 人工呼吸器をどのような条件で使用したいか
- 胃ろうや経管栄養についてどう考えるか
- 痛みや苦痛を取り除くケアをどの程度優先したいか
- 自宅、病院、介護施設のどこで過ごしたいか
- 自分で判断できなくなった場合、誰に意思をくみ取ってほしいか
人生会議が必要とされる背景
厚生労働省が公表している令和4年度の人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査では、一般国民3,000人を対象に、ACPについての認知度や話し合いの状況が調べられています。
その結果は次のとおりです。
人生会議(ACP)の認知度
ACPについて「知らない」と回答した人の割合
人生の最終段階の医療・ケアについて詳しく話し合っている人
家族等や医療・介護従事者と詳しく話し合っている人の割合
希望について考えたことがある
51.9%
一応話し合っている
28.4%
話し合ったことがない
68.6%
出典:厚生労働省「令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」。一般国民を対象とした調査結果。
つまり、自分の最期について考えたことがある人は一定数いるものの、その希望を家族や医療関係者と具体的に共有できている人は少ないという状況です。
2026年現在も、本人の意思を尊重するための事前の話し合いは重要な課題です。
ACPを実践するための5つのステップ
STEP1:自分が大切にしたいことを考える
まずは、治療の種類よりも、自分がどのような生活を望むかを考えます。
例えば、意識がある状態で家族と過ごすことを優先したいのか、できるだけ長く生命を維持したいのか、身体的な苦痛を抑えたいのかなどです。
STEP2:家族や信頼できる人と話し合う
自分の考えを家族や親しい友人に伝えます。
家族の意見を聞くことも大切ですが、本人の価値観を家族の希望で置き換えないようにする必要があります。
STEP3:医師や看護師に具体的な治療内容を確認する
人工呼吸器や胃ろうなど、それぞれの治療について、期待できる効果、身体への負担、治療しなかった場合の見通しを確認します。
「治療を受けるか」という質問だけでなく、「受けた場合にどのような生活が予想されるか」まで聞くことが重要です。
STEP4:事前意思表示を記録する
話し合った内容を文書に残します。
例えば、次の項目を整理しておくと、医療現場で本人の意思をくみ取りやすくなります。
- 希望する医療・ケア
- 希望しない医療・ケア
- 延命治療についての考え方
- 本人の意思を推定してほしい人
- 大切にしたい生活や価値観
STEP5:定期的に見直す
病気の発症、入院、認知症の進行、生活環境の変化などに応じて、考え方が変わることがあります。
一度書いた内容が絶対的な決定になるわけではありません。本人の気持ちを確認しながら、必要に応じて変更します。
本人が意思表示できない場合、家族はどう判断する?
厚生労働省のガイドラインでは、本人の意思が確認できない場合、家族等が本人の意思を推定できるかどうかを踏まえて判断する考え方が示されています。
具体的には次のような流れです。
本人の意思を確認できない
病状や意思決定能力を医療・ケアチームで確認
本人の事前意思や価値観を確認する
推定できる場合
本人の推定意思を尊重して方針を検討
推定できない場合
本人にとっての最善の方針を慎重に検討
医療・ケアチームと話し合い、方針を決定
意見がまとまらない場合などは複数の専門家による検討の場を設ける
このとき、家族が本人に代わって自分の希望を押し通すことは適切ではありません。
判断の中心に置くべきなのは、本人がどのような人生を望んでいたかという視点です。
また、厚生労働省のガイドラインでは、本人の意思を推定する人は法律上の親族だけに限定されず、親しい友人なども含めて考えられています。
家族がいない場合や、家族間で意見がまとまらない場合には、医療・ケアチームが本人にとって最善の方針を慎重に検討します。
日本老年医学会の人工的水分・栄養補給ガイドライン
胃ろうや経管栄養について考える際に参考になるのが、日本老年医学会の「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン」です。
このガイドラインは、2012年6月27日に理事会で承認されました。
人工的水分・栄養補給法(AHN)を導入するかどうかについて、単に生命を延ばせるかではなく、本人にとってどのような利益があるかを検討する考え方を示しています。
特に重要なのは、次の3点です。
- 栄養補給によって身体機能が改善し、本人らしい生活が期待できるか。
- 治療によって苦痛や身体的負担が増えないか。
- 本人の人生観や価値観に照らして、治療が望ましいものか。
また、すでに胃ろうなどを導入している場合でも、身体状態や治療効果の変化に応じて、栄養や水分の投与量を減らしたり、中止したりすることを検討する考え方が示されています。
一度始めた治療を、必ず最後まで続けなければならないわけではありません。
本人の状態を継続的に評価し、必要に応じて方針を見直すことが大切です。
【2026年最新】延命治療をめぐる日本の現状と意思決定の考え方
2026年の延命治療を考えるうえで、注目したいのは、単に生命を維持できるかという医学的な視点から、本人がどのような生活を望んでいるかという視点への広がりです。
厚生労働省の2018年改訂ガイドラインは、病院だけでなく、介護施設や在宅医療の現場も想定しています。
本人、家族、医師、看護師、介護職などが連携し、本人の意思を中心に医療・ケアの方針を決める考え方です。
2026年10月時点で、確認できる厚生労働省の基本ガイドラインは平成30年3月改訂版です。2026年の意思決定を考える場合も、この基本原則が重要な土台となります。
延命治療を決めるときに確認したい6つの判断基準
延命治療を受けるかどうかで迷ったときは、次の項目を医師に確認すると、選択肢を具体的に比較しやすくなります。
| 判断基準 | 確認する内容 |
|---|---|
| ① 回復可能性 | 病気や臓器機能が改善する見込みはあるか |
| ② 治療の目的 | 一時的な回復支援か、長期的な生命維持か |
| ③ 生活の見通し | 治療後にどのような生活が予想されるか |
| ④ 身体的負担 | 痛み、感染症、意識障害などのリスクはあるか |
| ⑤ 代替手段 | 緩和ケアや別の治療方法は選択できるか |
| ⑥ 本人の意思 | 本人の価値観や希望に沿っているか |
特に重要なのが、治療によって何が実現できるのかを具体的に聞くことです。
例えば、人工呼吸器を装着する場合でも、数日間の呼吸補助で回復を目指せるケースと、長期間の人工呼吸管理が必要になるケースでは、本人と家族が考えるべき内容が異なります。
治療の効果が不確かな場合には、一定期間治療を試み、あらかじめ設定した医学的な目標や本人の希望に照らして継続の必要性を再評価する方法についても、担当医に相談できます。
延命治療を希望する人・希望しない人の考え方
延命治療を受けるかどうかは、年齢や病名だけで決められるものではありません。
次のような考え方は、選択を整理する際の参考になります。
生命維持を優先したい人
- 回復の可能性があるなら積極的な治療を受けたい。
- 一時的に人工呼吸器を使用してでも回復を目指したい。
- 意識や身体機能の改善が期待できるなら治療を続けたい。
身体的な苦痛や生活の質を優先したい人
- 回復の見込みが乏しい場合、侵襲的な処置を避けたい。
- 人工呼吸器による長期管理を希望しない。
- 苦痛を抑え、家族と過ごせる時間や場所を大切にしたい。
治療内容によって判断したい人
- 一時的な人工呼吸器の使用は希望する。
- 心停止時の心肺蘇生は希望しない。
- 胃ろうについては回復可能性や身体への負担を踏まえて判断したい。
このように、延命治療は「受ける」「受けない」という二択だけで整理できるものではありません。
治療ごとに希望を分けて考えることが、本人にとって納得できる選択につながります。
【延命治療とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:延命治療とは、具体的にどのような治療ですか?
延命治療とは、医療技術によって生命を維持したり、死期を延ばしたりするための治療や処置の総称です。人工呼吸器、心肺蘇生、胃ろう、経管栄養、人工透析などが代表例です。ただし、これらは回復を目指す治療として行われる場合もあります。
Q2:延命治療を受けないことはできますか?
本人が意思決定できる場合は、十分な説明を受けたうえで、特定の治療を希望しない意思を示すことができます。治療の不開始や変更については、医学的妥当性や本人の意思を踏まえて医療・ケアチームと話し合います。
Q3:DNARを選択すると、すべての治療が受けられなくなりますか?
いいえ。DNARは心停止時に心肺蘇生を行わないという指示です。酸素投与、抗菌薬、人工呼吸器、輸液、栄養補給などが自動的に中止されるわけではありません。
Q4:胃ろうを造設すると、必ず延命できますか?
胃ろうは栄養や水分を補給する方法ですが、必ず生命を延ばせるわけではありません。効果は患者の病状や身体機能によって異なり、感染症や嘔吐、下痢などの問題が生じることもあります。
Q5:延命治療を中止することは法律違反になりますか?
すべての治療中止が一律に違法となるわけではありません。一方、日本では包括的な法的免責制度が確立しているわけでもありません。本人の意思、医学的妥当性、医療・ケアチームによる検討などを踏まえ、個別に慎重な判断が必要です。
Q6:延命治療と緩和ケアは同時に受けられますか?
はい。緩和ケアは延命治療と対立するものではありません。人工呼吸器や抗がん剤治療などを続けながら、痛みや息苦しさ、不安を軽減するケアを受けることができます。
Q7:家族が延命治療を決めなければならない場合、何を基準にすればよいですか?
まず本人が生前に話していた希望や価値観を確認します。そのうえで、治療による回復可能性、身体的負担、治療後の生活、代替手段について医療・ケアチームと話し合います。家族自身の希望だけでなく、本人にとって何が最善かを中心に考えることが大切です。
まとめ:延命治療は本人の意思と望む生き方を軸に判断する
延命治療とは、人工呼吸器、心肺蘇生、胃ろう、経管栄養などの医療技術を用いて生命を維持するための治療や処置の総称です。
治療によって回復が期待できるケースもあれば、身体的な負担が大きく、本人が望む生活の実現が難しくなるケースもあります。
大切なのは、単に長く生きられるかどうかだけではなく、治療によって本人にどのような時間や生活がもたらされるのかを考えることです。
2026年現在、日本の意思決定の基本となっているのは、厚生労働省の2018年改訂ガイドラインが示す、本人の意思を尊重し、多職種の医療・ケアチームと繰り返し話し合うという考え方です。
家族が判断を迫られたときも、本人が大切にしてきた価値観を振り返り、医師や看護師、介護職、医療ソーシャルワーカーなどと相談することが重要です。
ACP(人生会議)は、最期の医療を決めるためだけのものではありません。自分らしい生活を続けるために、元気なうちから希望を伝え、家族と共有する取り組みです。
延命治療を受けることも、特定の治療を受けないことも、本人の人生観や医学的な状況に基づいて考えるべき大切な選択です。
治療の内容を正しく理解し、本人・家族・医療関係者が納得できる形で話し合いを重ねることが、後悔の少ない意思決定につながります。 (出典: 延命 治療 と は(Yahoo!ニュース))
木村 あおい (Aoi Kimura)
メディア編集者最新のトレンドや話題のニュースをわかりやすく解説するWebライターです。読者の皆様に役立つ情報を日々お届けしています。
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